2012年12月19日水曜日

Max Payne 3 -オヤジ達の狂想曲

町外れのバーに腰掛け、後悔と自責の念にかられながら酒を呷る。
忘れられない過去が今も胸を締め付け、酒と鎮痛剤(Pain Killer)に依存し生きているのか死んでいるのか分からないような毎日。
そんな日々を過ごすMax Payneの元にある日、旧友と名乗る人物が現れてこう言うのだ。
「Max"Fuck'in"Payne、調子はどうだい?」

北米で2012年5月15日発売(日本だと9月6日)された「Max Payne 3」
米尼でSeason PassとのセットがThanks giving Saleで安くなっていたので購入。
今は選択出来ないが、購入時はSteam key版が売っていたのでそちらにした。
プレイ時間はSteam表記で10.5時間。難易度ハードでキャンペーン一周のみ、マルチは未プレイ。


Max Payne 3は現代の最高技術を詰め込み、クラシックスタイルのTPSを復活させたゲームである。

2006年、Epic Gamesが「Gears of War」を発売した時からTPSのスタイルは変わっていった。
壁や柱に身を隠し、照準を合わせてから身を乗り出し撃つ、というスタイルだ。
このスタイルはCover Shooterと呼ばれるタイプのものであり、Gears of Warが大ヒットしたため、以降発売されるTPSはこのスタイルが急激に増えた。
すぐに思いつくだけでもUncharted、50 Cent、VANQUISHにQUANTUM THEORY、Mass Effect、最近だとGhost Recon: Future Soldierと言ったところか。
このカバーシステムはTPSだけではなくFPSであるKillzoneの2と3にも採用されたり、Rainbow Six: VegasやDeus Ex: Human Revolutionのように普段はFPS視点だがカバーポジションに入るとTPS視点に変わるような物まである。

ではMax Payne 3はどうか。

今作にもカバーシステムは存在する。
しかし今作のそれは他の作品とはまた少し違った使い方になる。
なぜならMax Payne 3にはこのシリーズの花形とも言える“バレット・タイム”と“シュート・ドッジ”があるからだ。





バレット・タイム:ゲージを使用し、時間の流れを遅くさせられるようになる。照準を合わせる速度も遅くなるが、敵の急所を狙いやすくなるので戦闘を有利に進めることが出来る。前作までと違い、今作は細かくOn/Off出来るようになった。

シュート・ドッジ:ゲージを使用するが、ゲージがなくても発動可能。発動中はリロードが瞬時に終わるようになり、360度どの方向も発砲出来るようになる。しかし着地後は移動不可になり、無防備な姿を晒すことになる。


Max Payne 3の敵は硬く、体に数発当てた程度では死なない。後半になるにつれ、敵が重装備になっていくので尚更死ににくくなっていく。
敵を倒すためには急所を確実に狙っていかなくてはいけない。
その時に必要となるのがバレット・タイムとシュート・ドッジだ。
例えば、ドアをぶち破り大量の敵が押し寄せてきたとしよう。
その時Maxは柱の影に隠れつつ、拳銃に弾を込めながらノックを知らない無礼者達の数を数え、バレット・タイムとシュート・ドッジを駆使し敵を一網打尽にするのである。
今作でのカバーはあくまでこの二つの能力を使う態勢を整えるためのものであり、メインで使用するものではない。

「バレット・タイム」と「シュート・ドッジ」、この二つの能力を使い瞬時に敵の急所を狙う、つまりピンポイントで的を撃つというシューティングの根源としての面白さを追求したのがMax Payne 3なのだ。



シューティングに関して言えばMax Payne 3は過去二作の不満だったところを解消している。
しかし、「ゲームと映画の融合」というMax Payneが目指している方向性としてはMax Payne 3は2より退化してしまったと言えるだろう。

過去二作ではバンドデシネのようなグラフィック・ノベル風の演出が挿入されるのだが、Max Payne 1ではゲーム中随所に表示されるので、ゲームのテンポが崩れてしまっていた。
それを反省してか2ではこの演出が入るのはチャプターの間のみで、プレイヤーが操作中に流れを切られることはなくなった。
そして3ではグラフィック・ノベル風の演出は廃止され、テレビドラマ「24」のようなコマ割りがなされたカットシーンをリアルタイムレンダリングで表現している。
カットシーン自体はクオリティが高くリッチな映像表現に目を見張るものがあるのだが、問題はカットシーンが長い上に頻繁に挿入され、そしてそれをスキップすることが出来ないという点である。
厳密に言うとスキップ出来ないわけではないのだが、カットシーンが流れている間はバックでローディングが行われおり、それが終わるまで飛ばすこと出来ない。だがローディングが長いので実質飛ばせないのと同義である。
3では1以上に演出が入る回数が多い上に長いので、これではゲームをしているのか映画を見ているのかわからない。
映画を見ている最中にゲームが挿入されているかのような感覚に陥るのだ。
2までの開発を担当していたRemedy EntertainmentからRockstarに移り、Rockstarが過去作への敬意を評してオマージュを入れているのは分かる。それは分かるのだが・・・
結果としてMax Payne 3は現代の技術によって「ゲームと映画の融合」を模索していたMax Payne 1の良い所と悪い所をどちらも膨らませてしまった作品になってしまった。

総評

Max Payne 3はカットシーンの長さに耐えることが出来るのならば万人に薦めたいTPSである。
シュート・ドッジで飛び込み、着地するまでに敵の頭を吹き飛ばし、時間の流れが元に戻った時には全てが終わっているこの感覚はMax Payneでしか味わえない。
ストーリーは映画よりもテレビドラマを意識してるかのような作りなのだが、使い古されたプロットも散見できる。
ゲームというよりはインタラクティブシネマと呼んだ方が近い作りなので、そういうのが嫌いじゃないのであればプレイする価値は十分にある。



余談ではあるが、Max Payne 1と2を開発したRemedy Entertainmentの新作である「Alan Wake」もこの「ゲームと映画の融合」の理念は受け継がれている。
だが、こちらもMax Payne 2の良い所と悪い所を膨らませた作品になっているので「ゲームと映画の融合」は色々な技術が確立されてきた今でも難しいということなのだろう。

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